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165 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・昼:商店街へ] 投稿日: 2007/04/02(月) 04 31 34 「はやくはやくー!」 どこへ行くと言うわけでもないが、街中を無邪気に走りくるくると回る。 その姿はとても無邪気で可愛らしく、思わず笑みがこぼれる。 とはいえ、その無軌道に走り回る姿を見失わないように早足で追う。 「ふふーんだ、新しい服ではしゃぎたくなるのも分かるけど、まだ子供って事ね」 イリヤはふわりと髪をかき上げて少しだけ勝ち誇っているが、視線は服の入った袋に注がれている。 やっぱり着て歩いてみたいんだろうなあ。 とは言っても、既に店は出ちゃってるからどこかで着替えさせることもできないし、 それに、もしそれを言ったらプライドを傷つけられたと思って機嫌を悪くしてしまうかもしれない。 ……うん、イリヤには悪いが見なかったことにしよう。 そういえば色々と買う物があったんだった、商店街へ行こう。 「桜、忘れてたけど商店街によって買い物をしていこう、確か切れてるのは醤油、だっけ?」 「あ……はい、そうですね、私も忘れてました……ここからなら、バスの方が良いですかね?」 軽く周囲を見渡して場所を確認する。 「んー、そうだな、ここからならバス停も近いし、そうしようか……ちょっとイリヤと服を頼む」 桜にイリヤと荷物を預けてノインを追いかけることにする。 「シロウー、私は子供じゃないんだからねー!」 「やれやれ……私は無視なのね、ま、いいけど」 そんな言葉を背中に受けながら、雑踏に消えかかるノインを追う。 「ノイーン、行くのはそっちじゃないぞー」 声を掛けながら追うと、ノインの足が止まり、振り返ってくれた。 「どこか行くの?」 「ああ、そうんんだけど……ノインはどこか行きたいのか?」 記憶が戻るきっかけのような物があったのかもしれない。 だとすれば買い物よりもそっちの方が…… 「んーん、別に、珍しいから見てただけだよ、みんなおとなしいなーって思って」 「そうかな? こんなもんだろうって思うけど……」 確かに見渡してみれば、辺りにいるのはビジネスマンばかりで忙しげに歩き回って、話し声は携帯電話の声だけだ。 時折女子高生らしき人々が話しているが、精々その程度の物で、確かにおとなしいといえばおとなしいのか。 ……ひょっとしたら、もっと騒がしい場所で生まれ育ったのかも知れない。 記憶はなくなっても、そう言う感覚はあっても不思議はない。 「士郎、これからどこに行くの?」 思考にふけっているとくいくいと袖を引っ張られた。 「あ、ああ、商店街だよ、夕食の食材とか買いに行くんだ」 「うん、それじゃあ急ご?」 にこりとノインが笑う。 ……なにやら気を遣わせてしまったような気もするなあ。 頭を掻き、もう片方の手でノインの手を握り、早足で歩き出した。 「シロウー! こっちこっちー! バス来ちゃったよー!」 「せんぱーい、ノインちゃーん、急いでくださーい」 イリヤはぶんぶんと手を振って、桜は両手を挙げてこちらを呼んでいる。 見れば名城は既にバスに乗り込んで料金を払っている。 お札だから恐らく人数分だろう。 「走るぞノイン」 「うんっ」 手を取って走り出し、どうにかバスに乗り込んだ。 「ふーっ、間に合った……」 「それじゃあ発車しますから、席にどうぞ」 「あ、はい、分かりました」 十五分ほどで商店街前のバス停で降りる。 「それじゃあとりあえず、軽い物から買っていこうか」 幾つか思いついた夕食の食材を思い浮かべながら歩き出すと―― ザクタンク:「おや、士郎ではないですか」ライダーが正面から歩いてきた ガンタンク:「あれ? どうしたのみんなして」遠坂が店から出てきた ギャンキャノン:「おお、衛宮ではないか」一成が声を掛けてきた 投票結果 ザクタンク:5 決定 ガンタンク:0 ギャンキャノン:4
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107 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:血跡] 投稿日: 2007/01/18(木) 04 21 25 影がぶつかり合う。 一つは音にも迫らんばかりに一直線に空を駆ける。 対する一つは、耳障りな哄笑と狂気を散らしながら虚空にて待ちかまえる。 ……それは幾度となく繰り返された光景だ。 今現在切った札は互いに少なすぎる。 だが、それとて『空を飛ぶ』という一点でもって圧倒的なアドバンテージを有している。 クラスとして最優であるセイバー。 英霊であるその身をして、飛行するという力を持たぬ身である以上、虚実入り乱れる攻勢など不可能である。 その差をして拮抗しているという事実こそ奇妙。 バーサーカーは新たに札を切り、それをして攻めることは幾らでも可能なはずであった。 「くっ!」 セイバーはまたも一撃をいなされ、爪をその身に受けた。 だがその爪の先、腕を右手で掴み、腹部を狙う一撃。 半ば牽制ではあるが、無防備に受ければ肋骨を砕いて余りある威力だ。 その一撃を、セイバーの身体ごと回転して回避する。 バーサーカーは空中であることのアドバンテージを、これ以上無いほど生かしている。 その回転と同時、開いた左腕を突き出し、肩へ掌底を叩き込み、その反動を利用して再び足場へと戻る。 空中に、しかも足場から遠い場所に居る限り優位は動かないと認めたのは既に過去。 だから認めた段階で、作戦を変えた。 彼の『宝具』さえ使えばその状況も動くだろうが、消耗は極めて大きく、何よりこれ以上ないほどに目立つ、それこそ大地を、街を抉る光の剣が如く。 故にその使用は不可能。 そうであるが故に、バーサーカーが動いた瞬間こそが好機。 その瞬間を、息の殺して待ち続ける―― 「……よし」 少し不安ではあるが、相手も所持している以上、拳銃の攻撃性能は無視できるモノではない。 莫耶をベルトに挟み、拳銃を両手で構えて消え始めた足跡を追跡する。 勿論、罠の可能性もあるため警戒は必須だが、ただ体勢の立て直しのために逃げているのならここで倒さねばならない。 外の敵――バーサーカーと呼ばれていた――は紛れもない殺人鬼であり、そのマスターも確実に殺人を肯定し、それどころか罪があるのかと問うた。 そのような在り方であるが故に、衛宮士郎は、正義の味方を志す者はその在り方を否定しなければならない。 彼は人を犠牲にしない為に、戦っているのだから。 ビルを抉り取るように大きく開いた穴から先の部屋を覗き見て警戒する。 姿勢は出来るだけ低く、血痕を追跡する。 一つめ、二つめの部屋には特に何か置いてあることはなさそうだ。 血の跡を追い、続けて三つ目の部屋を覗き見る。 「……ん?」 部屋に血が広がっている。 溢れた跡と言うよりも、結果として溜まったような跡だ。 「後ろを警戒して立ち止まったのか? それとも何か……」 物陰から出て、血溜まりに触れる。 埃や破片で白く汚れているが、やはり乾いては居ない。 ふとその先を見る。 抉り取るような穴は変わらず、だが。 「血痕が、途切れている?」 突然すぎる出来事に、咄嗟の思考が追いつかない。 罠? だとすればこうして注目して動きが止まった段階で何かをされているはずだ。 周囲を見渡すが爆発物や細いワイヤーのような物は……ない。 「だとすれば……なんだ?」 バックトラック? いや、そうだったとしても血痕は残るだろうし、そんな元気があるならやはり攻撃をしてくるのではないだろうか? あの時使われた魔術は防御のみという事から、防御のみに特化しているという仮定の下で、さらに武器が無いとすればその疑問は解消できる。 「とはいえ、血の跡が消えたことの説明にはならないよな……いや、待てよ」 今夜の衛宮邸での戦いで、桜が腕に影を巻き付けて止血処理をしていた事を思い出す。 防御魔術の応用で、似たような事が出来るのか? 追撃を警戒しながら止血すると同時に、その処置の際に生じる自らの血の跡に注目させ、警戒させて距離を稼ぐ。 ……ありえるな。 強襲:そうはさせない、一気に追いかける 警戒:いや、そう考えさせるのも罠だとしたら? 投票結果 強襲 4 警戒 5 決定
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635 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/08/24(金) 04 13 42 「……エンジンを掛けても大丈夫ですか?」 逸る心のままにそう問うた。 その言葉が引き金になったのか、シャリフさんが堰を切ったように笑い出した。 その笑い振りは、見ていて清々しいほどで、思わず三人して見入ってしまった。 「ああ……面白かった、こんなに笑ったのは、ひょっとしたら初めてかもしれないわ、真面目そうな外見の割に抜けてるのね、『姉さん』て」 涙さえ浮かべて笑っていたのか、目元を軽く拭いながらシャリフさんが言った。 「……こんなところでエンジン回したら大問題よ、色々とね」 その言葉で思い出した。 Y2Kの排気ガスはとんでもなく高温だ。 有毒ガスとかそんなレベルの事はこの場合問題ではなく、可燃性の物体に引火して小火になりかねない。 実際土蔵の中身は木製の卓袱台だの藤ねえが持ってきて処分に困ったポスターだのが保管という名前で放置されている。 やったことはないがこんな物に600度を超えるガスが叩き付けたら多分即座に発火する。 「……ライダー、ここでエンジンを回すのは危ない、小火になる」 「そうでした……それにキーも差さっていませんね」 「キーはここよ」 そう言って、シャリフさんが手品のように肩口からキーを取り出す。 まるでそこに袋があるかのように、服の切れ目のような場所――だがそこには縫い目すらない――からだ。 「……今のは?」 手品の類ではないのは分かる。 「さあ、何かしら?」 誤魔化すように笑い、ライダーにキーを放り投げる。 それを無言のまま受け取り、ポケットに仕舞い込む。 「まあ、騒音の問題もありますから、遮音の結界を展開して貰わないといけませんね……まあスラストに比べれば静かでしょうが」 「……ライダー、それどう考えても比べる物間違ってる」 スラスト、正確に言えばスラストSSCはモンスターマシンと言うよりもモンスターそのものだ。 Y2Kはヘリのエンジンを搭載しているがスラストSSCは戦闘機のエンジンを二機も搭載しており、地上でマッハを公式に記録した代物だ。 そもそもあのマシンは明らかに『乗りこなす』とかそう言ったレベルの代物では無い。 読んだ雑誌には書かれていなかったが、あの直進振りから考えてみれば、左右に方向転換するためのハンドルすら無いのかもしれない。 「それじゃ、確かに渡したわよ」 それだけ言って、用件は済んだとばかりに踵を返す。 「衝動的に手に入れた物だけど……大事にしてくれると、嬉しい」 最後の方は消え入りそうな声だったけれど、それでも聞き取れた。 「ええ、勿論、大事にさせて貰います」 もしかしたら、彼女は感情表現が苦手なのかもしれない。 桜にもライダーにもそう言った面はあるし、桜に喚ばれた彼女も同じなのかもしれないと、ぼんやりと思った。 ぼんやりと眺めた背中は、土蔵の中からはもう見えなくなっていた。 「それじゃ、俺達も戻ろうか?」 「……そうしましょうか」 『結局私はなんで呼ばれたんでしょうか?』と言いたげな、釈然としない表情で桜が頷く。 ……この事を知っておいて欲しかったからなんだろうとは思うが、正しいかどうかは分からないのでそれは口にしない事にした。 「では私も少ししたら向かいます、二人はお先に」 剥がした布地を戻しながらライダーが笑う。 戻しながら車体を撫で回し、機体のラインを確かめているようで、その様子はいつになく浮かれている。 まあ、気持ちは良く分かる。 即座に諦めたとはいえ、乗り回したくて仕方の無かった機体だ、それが目の前にあって乗る気になればいつでも乗れるとなれば、そりゃ浮かれるのも当然だろう。 事実、握ったままの布地は掛けられることなく、もう片方の手で撫でたまま、目を潤ませて顔を赤らめている。 なんというか、その表情は物凄く色っぽい。 「……さあ、行きましょう」 ライダーの姿をじっと見ていたら桜に頬を抓られた。 なんというか、凄く痛かった。 印籠:居間に戻る ジェム:自室に戻る クラウン:縁側に座り込む
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――これは一体、どういう状況なのだ? 聖杯戦争の参加者たるマスター候補の中にあって、その男は例外中の例外と呼ぶべき存在だった。 原則、全てのマスター候補は一度NPCとして埋没し、日常の中で違和感に気づいた者がマスターとして目覚めることができる。 ならば男がこの世界に呼ばれたその瞬間から覚醒していたことは必然の事象であったに違いない。 「守護者としてでも、サーヴァントとしてでもなく、一個の生命として呼ばれたというのか……? それにこの令呪、まさかオレがマスターの側だと?どうなっている?」 在りし日は聖杯戦争に巻き込まれたマスターとして、死後はサーヴァントの一柱となって駆け抜けた「元」アーチャー。 英霊エミヤは守護者として抑止の輪に組み込まれた存在であり、一人の人間として市井に埋没するなど有り得るはずもない。 故にエミヤは極めて速やかに違和感に気づき記憶を取り戻すことに成功した。元より人間とは存在の階梯が違う、というのも理由の一つではあっただろう。 この世界の身分までご丁寧に用意されていた。 どうやら東京で休暇を取っているフリーランスの傭兵、という設定のようだ。まあ間違ってはいまい。 しかし聖杯戦争が行われることは間違いないだろうに何故何らの知識も付与されないのか? 本来呼ばれるはずのない存在をマスターとして呼んだが故の弊害だとでもいうのだろうか? 「全く、前回の召喚の時の事故でもあるまいし――――――何だと?」 自分で口に出した、否、記憶から出した事柄に驚愕を覚えた。 覚えている。覚えている。覚えている。第五次聖杯戦争にサーヴァントとして召喚された時の記憶全てを。 英傑たちとの戦い、己が望みを果たすために凛を裏切っても盤面を整え、過去の自分を消し去ろうとした。 だが、叶わなかった。いや、元よりそうする必要などなかったのだ。 そう、地獄に落ちようとも、誰かを救うために走り続けたこの道は決して間違いなどではないと気づいたから――― 「馬鹿な、何故記憶を持ち越している?座に戻るよりも前にこの世界に引っ張られたのか?」 サーヴァントというものは聖杯戦争での記憶を座に持ち込むことはできず、ただ「そういう事実があった」という記録が残るのみである。 にも関わらずエミヤには第五次聖杯戦争の記憶が鮮明に残っている。 考えられるとすれば、サーヴァントとしての己の魂が座に帰るよりも先にこの世界に引き寄せられた、という可能性ぐらいか。 これが聖杯の意思だとすれば、何の意図があって英霊をマスターの側として確固たる肉体を与えて配したのかまるで理解が及ばない。 確かにエミヤは英霊の中でも下から数えた方が早いほど格に劣る存在ではある。 しかし人間の魔術師と比較してしまえばその差は天と地ほどもある。 これではバランスを著しく欠くのではないか?それともこの世界にはエミヤに並ぶような力を持つマスターが何人も存在するのか? 「抑止力も、魔術師もオレを縛ることはない…ならばオレはどう動くべきなんだろうな」 これから起こるのが聖杯戦争ならば、無数の惨劇が起こり血が流れることは間違いない。 聖杯に懸ける願いなどは元よりなく、自らの手で叶えようとした悲願も最早必要ないとわかった。 ならば許されるのだろうか。もう一度、正義の味方として在ることを。 「なあ、名も知らぬサーヴァントよ」 「やっぱり気づいてたか。悪いな、そろそろ顔を出そうかと思ってたんだが」 エミヤの背後から実体化し、姿を現したのはまさしく勇者と呼ぶべき風貌の黒髪の青年だった。 マスターに与えられたステータス透視能力から見える数値はアベレージ以上、容姿からして東洋の英雄といったところだろうか。 「どうもそっちは色々事情が混み入ってるみたいだな」 「ああ、正直に言って混乱しているよ。君は事情を知っているのかな?」 「いくらかはな。どこから話したもんか……」 エミヤとレイラインで繋がったサーヴァントが話すところによると、この世界は聖杯によって再現された東京であるとのことだ。 住民もまた再現された存在…ゲームで言うところのNPCとでも呼ぶべき者たちであるらしい。 そして何と、マスターとサーヴァントの数は把握できないほどの多数に上るという。 「…この聖杯は凄まじいまでのリソースを備えているようだな。 だがこれは街中で聖杯戦争を開催するのとはわけが違うぞ。何故現代の日本の首都を再現する必要がある? そもそも、我々にこれほど高度に文明的な殺し合いを強いること自体聖杯に何某かの意思が介在している証左ではないのか?」 「答えてやりたいのは山々なんだが、俺も見てもいないことまではわからねえからな。 それともう一つ、さっきざっと東京を見回してみたんだが魔術回路もないマスターが結構いるみたいだ。 俺は生まれつき眼が良くてな、そういうのはわかるんだ」 「なるほど、私以上の千里眼の持ち主というわけか。さしずめクラスはアーチャーといったところか」 「おう、東方の大英雄アーラシュとは俺のことよ。 ま、実際はそう大したもんでもないけどな」 今はマスターとして立つエミヤとて本来は英霊である。 故に、遥か東方の英雄であるアーラシュについても知識を有している。 その身を犠牲にして大地を割り国境を作ることで、自身以外の血を一滴も流さず、敵も味方も一人も取りこぼすことなく救い、長年に渡る戦争に終止符を打った男。 ペルシャ神話全体で見ても間違いなく上位に位置するであろうほどの大英雄。 ある意味において、エミヤシロウの理想を実現してみせたとも言える英霊が目の前にいる。 「ふ、彼のアーラシュ・カマンガーが大したことのない英雄なら私などは塵芥以下だろうよ」 「そんなことはない」 弓兵は真っ直ぐにエミヤの瞳を見据え、静かに、しかし明確に断言した。 見透かされている。我知らず、エミヤはそんな感想を抱いた。 「お前はやるべき時に、やるべきことをやって、多くの民を救ったんだろう。 なら、お前は誰に劣りもしない立派な英雄だ。そうだろ、錬鉄の英雄?」 言い切るその瞳には一切の虚飾はなく、さりとて責めるでもなく柔和な笑みを浮かべる。 苦手なタイプだ。セイバーともランサーとも異なる、率直でいて大らか、穏やかなこの男相手ではエミヤの皮肉も通じそうにない。 「それで、方針はどうする?」 「そうだな、私は経験上聖杯というものをどうも信用できなくてね。 君は先程魔力を持たぬマスターがいると言ったな。それはつまり、私を含め自らの意思に依らず聖杯戦争に放り込まれた者がいるということか?」 「ああ、間違いないと思うぜ」 アーラシュの持つ千里眼は世界や人の有り様の全てを見通す。 ホテルの屋上から街を見下ろし何人かのマスターを視認しただけで聖杯が無差別にマスターを選別しているであろうことは見て取れた。 事実、視認したマスターたちの中には困惑の念を抱いている者が少なからず見受けられた。聖杯戦争自体を理解していない者も、だ。 「ならば、私はこの聖杯を破壊することを第一に行動するつもりだ。 死者たる英霊だけを扱き使うだけならまだしも生者をも無差別に招き入れ殺し合いを強いるなど、最早聖杯戦争それ自体が災厄だ」 本来の聖杯戦争は魔術師たちが死の危険を承知で自ら参加する儀式であり、そこで命を落とすのは端的に言って自業自得に過ぎない。 中には聖杯戦争の存在自体を知らぬ、魔術回路を持つだけの人間が聖杯に見初められ令呪を授かることもあるがあくまでそれは例外であった。 だがこの聖杯は違う。最初から素養の有無に関わらず無差別にマスターを選別し聖杯戦争に参加させている。 聖杯の汚染の有無は定かならずとも、その一点だけでエミヤにとって聖杯は度し難い悪徳としか映らない。 「なるほど。つまり望みもないのに巻き込まれた民を守るってことだな」 「いや待て、何故そうなる。話を聞いていなかったのか君は」 「聞いてたさ。だがな、もう少しぐらい素直になっても罰は当たらないだろう? 今のお前は抑止の守護者じゃなく、今を生きる人間の守護者になることだって出来るんだからな」 やはり苦手だ。何もかもを見通すこのアーチャー相手では普段の調子を維持できない。 というより、これほどの眼を持っていれば少なからず人格が歪みそうなものだがどういう精神構造をしているのか。 「ふ、ならば一つ乗せられてみようか。口にするのも恥ずかしい限りだが生前の私は正義の味方というやつに憧れていたのでね」 「その意気だ。いっちょ東京を救ってやろうや、マスター」 夜空には無数の星が輝いていた。思えば、生前の日々は届かぬ星に手を伸ばすようなものだったか。 答えを得た。その記憶を奪われずに今一度仮初めの生を得たのなら、もう一度無様な足掻きをしてみるのも悪くはない。 ―――少し寄り道になったが。オレもここで頑張ることにするよ、遠坂。 あの少女に恥じぬように在ろう。 無様な結果に終わるとしても、きっと意味はあるはずだ。 【クラス】アーチャー 【真名】アーラシュ 【出典】Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ 【性別】男 【属性】混沌・中庸 【パラメーター】 筋力:B 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:D 宝具:B++ 【クラススキル】 対魔力:C…魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。 Cランクならば魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。 単独行動:C…マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても、一日は現界可能。 【保有スキル】 頑健:EX…如何なる病にも毒にも侵されず、数多の戦いにおいて傷を受ける事すらなかったと謳われる肉体の頑強さ。 西アジアの神代最後の王、マヌーチェフル大王をして、替え難き至宝と賞賛した旧き神代の恩恵である。対毒スキルを付与し、耐久力を向上させる。 千里眼:A…視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。 このランクでは透視や読心、未来視をも可能とする。 弓矢作成:A…複数の矢を瞬時に作成する能力。 最大で空を埋め尽くす万単位の矢を作り出し、山をも削り取る威力を持つ飽和射撃を行う。 中距離戦闘でも五十程度の矢なら瞬時に作り出せる。 【宝具】 『流星一条(ステラ)』 ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:4~999 最大補足:1000人 ペルシャとトゥランの両国に「国境」を作り、争いを終結させた究極の一矢。2500kmにも及ぶ射程距離と文字通り「大地を割る」威力を持つ人ならざる絶技。 その性質から、一点集中ではなく広域に効果を発揮するため対軍に分類されるが、純粋なエネルギー総量は対城宝具に、魔力総量は対国宝具にも及ぶ。 だが究極の一矢と引き換えに五体四散して落命したように、この宝具はアーラシュの霊核をもって行われる「壊れた幻想」の特性が付与されているため、一度放てばアーラシュ自身が消滅する「特攻宝具」としての側面を持っている。 【weapon】 深紅の大弓と矢。 矢は近接戦闘で直接手に持って使うこともある。 【人物背景】 古代ペルシャにおける伝説の大英雄。 西アジアでの神代最後の王とも呼ばれるマヌーチェフル王の戦士として、六十年に渡るペルシャ・トゥルク間の戦争を終結させた。両国の民に平穏と安寧を与えた救世の勇者。 異名はアーラシュ・カマンガー。英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャー。 アジア世界に於いて弓兵とはすなわち平穏をもたらせしアーラシュをこそ指し示す。現代でも彼は西アジアの人々に愛されている。 伝説において、アーラシュは究極の一矢によってペルシャとトゥランの両国に「国境」を作り、大地を割った。その射程距離、実に2500km。 人ならざる絶技と引き換えに、彼は五体四散して命を失ったという―― 【サーヴァントとしての願い】 聖杯に懸ける願いはない。 人を超えた力を持つ者が民の生命や平穏を脅かすのを阻止することが自分の役割と信じるのみである。 【基本戦術、方針、運用法】 宝具の使用は脱落とイコールのためスキルのみで戦うことになる。 近接戦闘にも耐え得るがやはり本領は中距離以遠での射撃戦にこそあるので、弓兵のセオリーに従って運用するべき。 接近を許した場合はエミヤに前衛を任せ後方から援護射撃を行うという手もある。 【マスター】エミヤ 【出典】Fate/stay night 【性別】男性 【マスターとしての願い】 聖杯は信用ならないため、破壊する。 同時に、もう一度正義の味方として人々を守りたい。 【weapon】 各種投影宝具 【能力・技能】 『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』 錬鉄の固有結界。 自らの心象風景の中に相手を誘い込む大魔術であり、彼の場合、そこには彼の記憶に蓄えられた無数の剣(複製品)が存在する。 また彼は複製品を投影する際、その武器に篭められた記憶をも同時に再現するため、その武器に応じた持ち主の戦闘経験を発揮できる。 英霊としての魔力、身体能力 本来人間ではなく英霊であるため現代の魔術師のそれとは比較にもならない魔力を有する。 また、今回のエミヤの身体能力は第五次聖杯戦争におけるステータスに準じるものとする。 【人物背景】 本作の主人公、衛宮士郎が世界と契約し死後英霊となった存在。 抑止の守護者として使われるうちに精神が摩耗し、いつしか自分殺しを願うようになった。 しかし第五次聖杯戦争において過去の自分である衛宮士郎に敗北し、答えを得る。 今回のエミヤは第五次聖杯戦争(凛ルート)の記憶が継続している。 【方針】 聖杯の破壊を第一とするが、最悪の場合は信用できるマスターを生き残らせ聖杯を託す。 自身の生存に関しては最初から度外視。 候補作投下順 Back 聖剣伝説 ―勝利と栄光の旅路― Next このロクでもない戦争から生還を!
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【マスター】立花響 【出典】戦姫絶唱シンフォギアG 【性別】女性 【令呪の位置】右手の甲 【マスターとしての願い】 ガングニールの過剰融合を抑えたい 【weapon】 ガングニール 北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。通常のシンフォギアと異なり、響の肉体と融合している。 本人の潜在意識により、アームドギアは具現化せず、四肢のパワージャッキを活かした格闘戦を行う。 【能力・技能】 融合症例第一号 シンフォギアと人体が融合した状態を指す。 起動や運用方法については、通常のシンフォギアと変わらないが、 聖遺物のエネルギーが直接人体に行き渡っていることもあり、通常以上の出力や回復力を発揮している。 しかし現在はその融合が、必要以上に進行してしまっている。 その分出力は高まっており、下級のサーヴァントにすら匹敵するものになっているが、 反面変身状態を維持し続ければ、逆にシンフォギアに同化・吸収されてしまうというリスクを孕んでいる。 更にこの聖杯戦争の舞台においては、その速度が加速しているようだが……? シンフォギア適合者 神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。 元々二課からはノーマークであったことから、融合症例となる以前の適合係数は、それほど高くなかったものと思われる。 しかし今より未来においては、その必要に迫られた時、火事場の馬鹿力的に必要適合係数を獲得したという。 格闘術 師匠・風鳴弦十郎の下で磨き上げた格闘術。 元々弦十郎の格闘術自体が、映画のアクションシーンを模倣・再現したものなので、特定の流派に依るものではない。 ボクシング、ジークンドー、果ては中国拳法の八極拳まで、様々な拳法のスタイルがごちゃ混ぜになっている。 【人物背景】 「私は立花響、16歳ッ! 誕生日は9月の13日で、血液型はO型ッ! 身長はこの間の測定では157cmッ! 体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげるッ! 趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはんッ! 後は……彼氏いない歴は年齢と同じッ!」 特異災害対策機動部二課に協力する、第3号聖遺物・ガングニールのシンフォギア装者。 2年前のツヴァイウィングのライブに際し、胸に聖遺物の破片を受け、融合症例第一号となる。 その後は誤解から迫害を受け、心にも深い傷を負ったが、 友人・小日向未来の献身もあり、反対に「人のぬくもり」の尊さを知ることになった。 かつてのトラウマは乗り越えており、底抜けに明るく元気な性格。 困っている人を放っておけず、率先して誰かの助けになろうとするタイプ。 しかしその性質は、ライブ会場で他の犠牲者の代わりに生き残ってしまったという認識に端を発しており、 戦いから遠ざけられた時には、反動で強い無力感に囚われてしまう。 【方針】 聖杯に魅力は感じるが、そのために聖杯戦争に乗るのが正しいのかどうかは悩み中。 それでも生きることだけは諦めない。敵が襲ってくるのなら立ち向かう。
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キャラシート【としあきの聖杯戦争】 【クラス】アサシン 【真名】ユーディット 【容姿】短剣を携えた美女 【その他】混沌・中庸 【英雄点】40点(ステ20点・スキル20点):令呪0画消費 【HP】30/15+15 【筋力】E:1 【耐久】C:3 【敏捷】A:5 【魔力】E:1 【幸運】EX:8(10) 【スキル1】気配遮断A 10:先手判定時、補正値5を得る。交戦フェイズ中に相手前衛に対し、奇襲攻撃を行える。 【スキル2】神性D- 5:キャラシート作成時、サーヴァントの英雄点10を得る。 【スキル3】精神混濁:C 5:先手判定時に補正値2、奇襲攻撃時に補正値5を得る。 【宝具】純潔の肢体(ホロフェルネス・キラー) 1/1 【ランク・種別】C・対人宝具 【効果】奇襲攻撃時、補正値10を得る。相手が男性のとき、「すべての判定にマイナス1の補正を得る」状態を付与する。
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人物背景 第五次聖杯戦争(Fate/stay night)で、キャスターであるメディアによって召還されたアサシンのサーヴァント。 ルール違反の上に成り立っている召喚なので、本来のアサシンではない架空の英霊(正確には亡霊)が召喚された。 召還の際に触媒に使用した柳洞寺の土地を依り代とし、「マスターの存在しない英霊」として強引に現界している。 その為に土地の近辺しか動くことが出来ず、山門の番人のような役割を担っている。 真名は佐々木小次郎ということになってはいるが、その正体はあくまで「佐々木小次郎」という存在を演じるのに最も適した無名の剣士が その名を借りてサーヴァントとして召還されたという、言わば「佐々木小次郎の殻を被った名もなき亡霊」。 元は読み書きもできず名もない百姓で、生涯戦うこともなく剣の鍛錬をし続けた柳桐寺に縁のある剣士だったと思われる。 存在するはずのない英霊ではあるが、その剣術の腕はセイバーを相手に互角以上に渡り合い (メディアの援護があったとはいえ)バーサーカーであるヘラクレスを退ける程のもの。 公式で「第五次において単純な剣術の腕で最強なのは小次郎」と言及されており、剣士としては相当な実力である。 【二次キャラ聖杯戦争】ではイレギュラーな方法を用いたキャスター(蘇妲己)によって柳洞寺で召喚された。 パラメーター 筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運A 気配遮断:D…自身の気配を消す能力。アサシンのDランク気配遮断は「透化」スキルからの派生。 厳密には気配遮断スキル自体は有していないが、「Dランク気配遮断スキルと同等の能力がある」という意。 心眼(偽):A…直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。 透化:B+…明鏡止水の心得。精神干渉を無効化する精神防御。第五次のアサシンは正式なアサシンではなく、 本来の意味での「気配遮断」のスキルは持たないが、このスキルが気配遮断の代用にもなっている。 宗和の心得:B‥同じ相手に何度同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技法。攻撃を見切られなくなる。 『燕返し』 種別:対人魔剣 最大捕捉:1人 宝具ではなくスキル。修練を重ねた結果編み出した技。 かつて暇つぶしにツバメを斬ろうとした際、空気の流れを読まれてことごとく避けられた結果、それでもなお打ち落とそうとして編み出した。 無形を旨とする彼が唯一決まった構えを取る。 相手を三つの円で同時に断ち切る絶技。三つの異なる剣筋が同時に(わずかな時間差もなく、完全に同一の時間に)相手を襲う。 魔術ではなく魔剣。人の業のみでたどり着いた武術の極地であり、「分身」の魔技。 円弧を描く三つの軌跡と、愛用する太刀の長さが生み出す回避不能の必殺剣。 多重次元屈折現象、と呼ばれるものの一つ、らしい。 正式な英霊ではない為、宝具は存在しない。
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163 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:夜間屋内戦] 投稿日: 2007/01/22(月) 04 15 45 伏せ姿勢から立ち上がる事なんてできはしない。 元より脆いと言うことを差し引いても、遮蔽物を簡単に撃ち抜いて飛び去るその弾丸は身体のどこに当たろうとその部位を吹き飛ばすことになるだろう。 そんな予感があったから、立ち上がることなく、匍匐状態のまま部屋の外を目指す。 部屋の外から気付かれることなく接近しなければならない。 拳銃があるとはいえ、機関銃と比べれば火力は著しく落ちる。 理想型を言えば、零距離から一撃で心臓を撃ち抜く事。 一撃で倒し、反撃の隙を与えないことだ。 ……自分に出来るか? もう一度、誰かを殺すことが出来るか? 首を振り、考えを打ち消す。 「……できるさ」 自分に言い聞かせ、手にした拳銃を握り直す。 次々と手元の銃から弾丸が発射され薬莢が落ち、目の前の遮蔽物に穴が開いていく。 反撃はない。 倒したのか? ……その保証はない。 糸のトラップには引っかからず、その真上に設置された赤外線のトラップには引っかかった。 つまりまず間違いなくその瞬間までは生きていた。 ……右手を失ったのは痛い。 出血は止まっているし、発砲動作そのものに支障はないが、二挺装備は不可能となった。 義手にしたとしても、恐らく元に戻ることはあるまい。 「聖杯に望むことが増えた、な……」 己の望み、『完璧なる存在』になるために、欠け落ちた部分は存在してはならない。 その為に聖杯を望み、願う為に銃火器の取り扱いにも精通したし、魔術の鍛錬も怠らずに続けてきた。 だが右手は切り落とされた。 近接戦闘の技術は未習得だった。 バーサーカーで敵サーヴァントを分断し、防御魔術で防御しつつ敵マスターをトラップと銃火器で攻撃する。 それが彼の想定した必勝となるはずの戦術であった。 だが接近され、右手から切り落とされた。 「実戦経験の差、か……」 防御魔術の突破はしえないようだが、魔術の解除から攻撃、再展開の間に攻撃された。 数度、いや、それ以上の実戦経験があると言うことだろう。 そしてこの必勝戦術を試すのは今夜が初めて。 人寄せの魔術は既に停止し、己の内に魔術を溜めておく。 ちらりと机に立てかけられた銃器に目を向ける。 M16A2。 米軍で正式採用される信頼性の高いアサルトライフル。 今夜このビルに運び込んだ武装はこれで全て。 「確実に殺しきる……!」 完全なる殺意を込めて、隣室へ向けて途切れ途切れに弾幕を張る。 それでも、ベルト給弾式のMG3の弾丸が切れるまであと一分もない。 廊下に出て、発射元を探る。 発砲音が連続してに聞こえてくるので探り当てるのは比較的簡単だった。 「……いた」 ちらりと覗き見ると、左腕で引き金を絞り、先程まで居た部屋へ、今となっては明後日の方向に向けて乱射を続ける男が見えた。 瓦礫が変な風に邪魔をしている上、瓦礫の山を越えてしまえば敵まで障害物はない。 恐らく敵までは30メートル前後。 そして気付かれれば恐らくやられる。 ……ここから拳銃で狙撃する。 頭を狙えば恐らく必殺だろうが、扱ったことのない拳銃という武器で小さい頭部に当てられるかは分からない。 攻撃手段を奪うという意味では残った左腕だろうが、否定要素は頭部に同じ。 だとすれば狙うのは胴体か? 胴体を狙えば恐らく当たるだろうが倒せるかと言われれば恐らく否、だろう。 それに、足下には予備の物である火器が置かれている。 持ち運びを前提にして居るであろうサイズの火器を壁に向けて撃つことはないだろう。 ……恐らくチャンスは一度。 伏せ撃ち体勢ならば命中精度が上がるだろうが、外して気付かれれば次の動作に移るまでに時間がかかる。 立ったままでは次の動作に移るまでの時間は最速だが、肝心の命中精度は下がるだろう。 折衷案は膝立ち姿勢で、中途半端かもしれないが、即応も取れると言う意味では重要かもしれない。 少し痺れの取れた左手を添え、狙いをつける。 ダブルクロス 1:立ち撃ちの姿勢で―― 2:膝立ちの姿勢で―― 3:伏せ撃ちの体勢で―― A:頭部を狙う―― B:左手を狙う―― C:胴体を狙う―― 投票結果 1 0 2 5 3 3 A 1 B 2 C 5 結果:膝立ちの姿勢で胴体を狙う
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その日は、紅く染まっていた椛が枯れそうになる、秋の終わりを予感させる季節だった。 日本、冬木市。訪れる寒さへの備えをする人々の群れがあちこちに点在している。 そんな町の中でも高層ビルの建ち並ぶ『街』の、更に天辺。 「諸君、遂に時は来た」 一際大きな建物の最上階に、厳かな男の声が響いた。 「それでは、今年がその」 男の周りには老人達が居た。 60代のでっぷりした小男、杖を手にした90近く見える翁。 その他にも5人近くが、会議室の席につき真っ正面に座る外国人の男に真剣な視線を向けていた。 正面の男は、枯れ木に威厳を持たせたようなこれまた老人だった。 しかし、周りの有象無象の老人を「腹に一物持った老獪な大臣」とでも表現するならば 彼だけは「傲慢さを隠すことなく中心に君臨し続ける老王」と評すべきほど雰囲気が違う。 器が違う、と言い換えても良いだろう。枯れ木のような男がこの会合の中心人物と見てまず間違いない。 正しく家臣と君主のような力関係を持つ彼らを少し離れて見るのは、スーツを着こなした女秘書だ。 彼女は誰にも気付かれぬようそっと窓まで近づき、カーテンを閉めた。 「今年、この冬木で聖杯戦争が行われるのですね」 「そうでなければ、わざわざこんな辺鄙な国まで私自ら出向くなどあり得ん」 「仰るとおりで」「それはもう」「有り難いことです」 母国を虚仮にされた老人達は、しかし男の機嫌を取ることにしか興味がないらしい。 彼らに愛国心というものは存在しない。望みは保身、名誉、金といったところか。 明日日本が滅んでも、自分たちの権益さえ変わらなければ何も変わらない一生を送るに違いない。 全く操りやすい手駒だ、と男――――セラード・クェーツは内心で嘲笑した。 己の持つ奇跡を餌に釣った老人達は、これでもこの冬木の所謂重鎮らしい。 治安を守る警察署の署長までもがこちらについているというのは、笑うべきところなのだろう。 「今宵は我らの悲願、世界を手中に収める計画の記念すべき第一歩を踏み出す日となることだろう。 私の偉業を認めぬばかりか、時計塔から追放したあげく異端として抹消しようとする教会の下衆どもに鉄槌を下す。 そして、聖杯の奇跡により私はこの世界の頂点に立つ。尽力した貴様らにはそれ相応の椅子を用意してやろう」 おお、とどよめく冬木の中心人物達。 嘘か誠か涙を流すもの、感謝の意をマシンガンのように発するもの。 みな、等しくセラードの言葉を鵜呑みにし、自分たちが始末される可能性など爪の先ほども考えていない。 「それでは、これより降霊の儀を行う」 老人達の座る椅子で囲まれた会議室の真ん中には、既に魔法陣が描かれていた。 このビルの持ち主、右から三番目の席で汗を拭いている老人の部下達がこちらの指示通りに用意をしておいたらしい。 意味も分からず社長の指示で生き血を床に塗りたくる作業は、さぞかし馬鹿らしかったことだろう。哀れみさえ感じる。 勿論、そんな部下達は数日後に不幸な事故で亡くなる予定なのだが。隠蔽は完璧に行わなければならない。 「エニス、あれを持て」 呼ばれた女秘書が足下にあった大きなトランクをセラードの前に置く。 机に置かれたトランクはその在り来たりな外見に見合わず、生半可な魔術が直撃しても壊れることのない特注品だ。 セラードは厳重にかけられた四重のロックを順々に鍵で開け、その奥に封印されていた箱を取り出した。 その箱にも魔術的な札が幾多にも貼られており、彼以外の人間が触れた場合命を落とすことになる。 中に入っているのは 「それが……うっ!」 「――触媒だ」 クロバネ。 禍々しい『気』が、一番近くにいた老人の意識を刈り取った。 他の老人達も襲い来る寒気、頭痛に呻き、みな一様に畏怖をソレに向ける。 百戦錬磨の殺し屋に殺意と銃口を向けられたような、錯覚。 ソレは、悪意を顕し、害を為し、災いを引き起こすと、ヒトとしての本能が叫んでいる。 今すぐここから逃げ出したいと、常人なら誰もが思う、そんな代物。 しかし、セラードは隣で泡を吹いている男を完璧に無視し、そのクロバネを掴んでみせた。 「貴様ら如きの凡夫にも感じるものがあるだろう? これは私が世界各国を探し回り見つけた、最高の聖遺物だ。 入っていた棺には『我らの神、ここに眠る』と印されておった。 創世の幕開けに相応しい、ヒトを超越した神が我らを勝利へと導くだろう」 スーツを着た秘書は敬うようにゆっくりとハネを受け取り、陣の正面に配置された机に配置した。 そのまま、彼女は詠唱を開始する。 これには、別の意味で周りの老人達がざわついた。 彼女の手の甲に刻まれた令呪になど、全く気付いた様子もない。 「セ、セラード様。貴方様がマスターとなるのでは」 「恐れながら、あのような女よりも貴方様の方が」 不安に思わず口を出してしまう老人達を、セラードは 「無能共が」 言葉の刃で切り捨てる。 「貴様らの頭に入っているのは蛆か?蠅か?碌に考えもせず囀りおって。 何故私がこの大事にあの女、エニスを連れてきたと思っている。 今日のために『作った』アレを、ここで使わずどうするというのだ」 黒いスーツを着こなした女秘書、エニスは。 ホムンクルス(人造人間)である。 ♀♀♀ 私は、この日のために生きてきた。 いや、生かされてきた、と言い換えた方がニュアンスは伝わりやすいかもしれない。 私は生まれる際に聖杯に選ばれるように様々な『調節』を行われ、生まれてからは魔術に関する知識を叩き込まれた。 セラードが『喰って』得た戦闘技術も与えられ、実地演習という名目で、セラードを異端として殺しに来た代行者を殺したこともある。 セラードの細胞を触媒として作られたこの身は、彼の戦闘能力を十分に受け継いだということだろう。 母はいなかった。推測になるが何処かから攫ってきた女性の細胞を使い、その後殺したのだろう。 寂しいという感情は生まれなかった。私に母がいたという実感もあまり沸かなかった。 そもそも、情操教育などの要らない情報は極力カットされてきたので、私が母という概念を知ったのは生まれたからずいぶん経った後だったからだ。 メディアが発達した時代に隠し通せることではなかっただろうが、それでもセラードは「母」という存在、 そればかりか「愛情」や「友情」などを極力教えないようにしていた。 彼はホムンクルスに自我が生まれることを厭っていたのだ。 余計なことを口走った『兄弟姉妹』はみんな殺された。 私は「悲しい」という感情をそこで初めて知り、――そして心の奥底に封印した。 人形のような私だが、死ぬのは、嫌だった。 この気持ちさえも、自我なのかも知れないが。 そして、この瞬間。 「貴様がマスターか」 私は、死の目前にいた。 主、セラードは目の前で肉塊になっていた。 周りの老人達も似たような有様で、血の香りが閉じきられた部屋に充満している。 惨劇を作り出したのは、どう見ても私が呼び出したサーヴァントだった。 「俺に従え」 金髪に少し黒が混ざっている、変わった髪の男だった。 その眼差しは私を家畜、下手をすればそれ以下としか見ていないように感じる。 その手は白く歪なカタチをした刃と成っていた。 一瞬で私以外を切り刻んだのはこの武器――この場では凶器と言った方が似つかわしいように思う――だろう。 「従わなければ、殺す」 死にたくない、と素直に思った。 膝が震えている。呼吸がしにくい。唾を大きく飲み込む。 この日のために生きてきて他に何もない私だが、生物として生存本能は持ち合わせているようだった。 いくら機械のように育てられ、扱われてきても、そんなことで死の恐怖を乗り越えることは出来ないらしい。 ああ。確かに、私は今死にかけている。危機に瀕している。 しかし、それはサーヴァントの持つ刃によるものではなく――。 「なるほど、大した力だ」 肉塊が、声を出した。 「私でも反応するのがやっとで防御が間に合わん。 さすがは最優のサーヴァント――セイバーだ」 「面白くもない手品だな」 飛び散った血しぶきが、ズズズと蠢き出す。 落ちていた誰かの腕は、誰かのもとへと意志を持つように動き出した。 肉が、脂肪が、目玉が、爪が、髪が、骨が、血が。 戻っていく。所有者の許へと返っていく。 セラード・クェーツは、不死者だ。 「この力を見て大した反応もないとは、流石は神と崇められていた男だな。 そこの馬鹿共はこぞって這い蹲り、私に不死をねだったものだが」 「たかが再生能力の一つや二つ、珍しくもない」 セラードが冬木の権力者達を傘下におけたのは、この力によるものと言って良い。 奇跡を見せ、お前にも力を与えてやるから手を貸せ、と。 こういう具合で、彼は配下を増やしながら力をつけていった。 この不死にはいくつか仕掛けがあり、まずセラード以外の人間は不死身だが不老にはなれない。 さらに、セラードはその『出来損ない』の不死者達を一方的に『殺す』事が出来る。 結果として、餌に群がった虫達は彼の忠実な下僕となる。 死から遠ざかろうとセラードに近づき、結果として死を恐れ彼に服従するのだ。 元々、不老不死の術は彼自身が編み出した秘宝ではない。 発端は数百年前に遡る。 同じ志を持つ仲間とともに彼は大陸を渡り歩き、最終的に願いを叶える悪魔の召還術に手を出した。 そして、その悪魔との契約によって得た『不死の酒』を飲むことでセラードは不老不死となったらしい。 その後、異端として教会に追われながら研究を重ね、不老ではないが不死となる酒までは開発出来た。 あとはその『出来損ない』を使い冬木の権力者達のような配下を増やし、完全なる『不死の酒』を作るために各地で研究を続けている。 だから、正確に言えば聖杯戦争への参加は横道に逸れたものであって彼の本懐ではない。 何百年も生きている彼にとって、せいぜい『成功すれば御の字』レベルの実験なのだ。 成功すれば世界を牛耳るという願いが叶うし、失敗しても大した損害はない。ローリスクハイリターンだ。 そもそも、不老不死の身である彼からすれば時間などいくらでもあり、今回が駄目でも次回がある。 だからこそ、自らがマスターとはならず忠実なるホムンクルスを使って実験を行うつもりなのだろう。 それと、彼は絶対に否定するだろうが。 聖杯に選ばれた優秀なマスター、もしくは超常の力を持つサーヴァントならば『不死者を殺す』ことも出来るかも知れないという懸念もあったのだろう。 「滑稽だ」 その懸念が、早くも現実となりつつあるらしい。 セイバーの周囲に、正体不明の力場が発生する。見たこともない巨大な力の塊だ。 魔力パターンを照合。該当無し。完全にロストテクノロジーな産物らしい。 こんなものが開放されれば、少なくともこのビルそのものが吹き飛びかねない。 ようやく再生を終えた老人達が、ひいひい言いながら我先にと部屋から逃げ出した。 サーヴァントは残忍な笑みを浮かべながら老人を見据え、セラードは金髪の男に侮蔑の視線を帰す。 私に分かることは、セラードとセイバーはどう考えても良好な関係を築くことが出来なさそうだと言うこと。 少なくともセイバーはセラードを殺すことが出来ると思っていること。 それと。 「愚か者が」 「あっ………………」 私が死ぬかも知れない、ということ。 「存分にやってみるがいい。己のマスターがいなくなっても良いというのならばな」 セラードは私を『作る』際に色々と手を加えている。 分かりやすいもので言えば不死。私も、セラードのように死なない身体になっている。 セラードの細胞を使って生み出された私は、彼の分身とも言える存在なのだ。 そして、その副産物として――――。 「私の意志一つで貴様のマスターは細胞を破壊され、死を迎える。 私が死ねば、同様にこいつも死ぬ。そういう風に『作って』ある。 一番最初の脱落者は最優のサーヴァント、セイバー。死因は、自らの手によるマスター殺し。 なるほど、確かに――――滑稽だな?」 もしかしたら、セラードはこういう事態をも想定していたのだろうか。 彼にとってセイバーも、私も、聖杯戦争という儀式さえも、無限の寿命の中でいくらでも替えの効く存在なのだ。 気に入らなければ壊してしまえばいい。また新しいモノを作ればいい。 セラードは私という個体に、何の執着も未練も持ち合わせていなかった。 私のからだが、崩れていく。 操り人形の糸が切れたかのように、自由が奪われていく。 倒れ込んだ先の地面を冷たいとは思わなかった。ただ、痛かった。 既に体温が失われつつあるのだと他人事のように考察する。 セラードは、本気だった。 「セイバー……靴を舐めろ。それで今回のことは不問とする」 薄れゆく意識の中で、私はぼんやりとセイバーの視線を感じた。 彼の瞳に映るのは……激情だったか、諦観だったか、殺意だったか。 それとも――――憐憫だったか。 ♂♂♂ 「しばらくは、ここが私達の拠点となります」 「…………」 ホテルの一室で、私は生を実感していた。 どう見ても機嫌が悪いセイバーと一緒なのは些か命の危機を感じるが、それ以外は何の異常も見受けられない。 今日のために『作った』私に少しは期待をしているのか、興味や研究のためなのかは分からないが。 セラードは私を通して、少なくとも今回の聖杯戦争の様子を見るつもりにはなったようだ。 そう正直に話すと、セイバーの機嫌は更に悪くなったように見えた。 本当に靴を舐めたのかは……定かではない。ずけずけと聞くような蛮勇を私は持ち合わせてはいない。 そして、そのセラードは他のマスターやサーヴァントを恐れているのか別行動を取っている。 私と一緒にいれば嫌でも聖杯戦争に「参加」しなければならないので、その判断は正しいと言えよう。 それに、彼は彼独自に動き他マスター達の情報などを集めているのかも知れない。 冬木の権力者達を配下に置いたのは、彼らを使いこの戦いを有利に進めるためでもあるのだから。 いずれにせよ、近いうちに彼から指令が届くのだろうが、今は待機するほかない。 ぽふっ。 ベッドに横になる。セラードと別行動になるのは久しぶりだ。 ふかふかの毛布を実感できることが、生きていることが、少し嬉しかった。 「貴様は」 「はい?」 そんな私を見て舌打ちを隠しもせず、セイバーはイライラした口調で私に問いかける。 「あの屑に使われることを、なんとも思わないのか」 「……」 「ヒトの都合で作られ、使い潰され、挙げ句の果てに殺される。 貴様は…………それで良いのか」 考えたこともなかった、と言えば嘘になる。 しかし、考えたところで現実が好転するわけでもないし、その発想は危険だった。 私は聖杯戦争のために作られ、使われ、運が悪ければ殺される。 そういう存在なのだと思いこむことで、私は自我を表に出すことなく今まで存在を許されてきたのだから。 今この瞬間だって、セラードはどこから使い魔を使い目を見張らせているのか分からないのである。 余計なことは口走るべきではないし、ただ黙々と主人の命令を聞いていればいい。 「私はセラード様から、逃げられません。そういう運命なんです」 にも関わらず。 どういうわけか、私はそんな危険な言葉を、発していた。 「例え地球の反対側に逃げようともセラード様は指一つ動かすことなく私を殺せます。 逆に、私はセラード様を絶対に殺せません。だから……仕方ないんです」 セラードとの事務的な会話以外を、ずいぶん長い間してこなかったように感じる。 私には、頼れる仲間も甘えさせてくれる母もいなかった。 だからだろうか。こんな弱音を、本心を、出会って間もないサーヴァントに打ち明けてしまったのは。 そして。 この弁明は、私の本心からの言葉だったのだろうか。 今まで寡黙だったセイバーが、熱を持って私と向き合っている。 何かを思い出すかのように顔を歪め、真剣な眼差しで私を見つめてくる。 その事実に、長い間凍っていた私のココロが、突き動かされなかったと断言できるだろうか。 私は、何かに 「聖杯がある」 期待しては、いなかったか。 「私の動向はセラード様に逐一報告する義務があります。 使い魔も幾多に張り巡らされ、聖杯戦争の情報は彼にとって筒抜けと言っても良いでしょう。 仮に勝ち残ったところで……聖杯を手にするのは私ではなくセラード様です」 「そんなことは聞いていない」 つまらなそうなセイバーの声。いや、違う……怒っている。 セイバーが近づいてくる。比較的広いホテルの一室とはいえ、ものの数秒で私と彼の距離はゼロになる。 反応に困った私は、顔を背けた。これ以上はいけないと、態度で示す。 しかし。 「あっ…………」 心の距離さえも何の障害にもならないといった風に、セイバーはベッドの上の私を押し倒した。 熱い。身体が密着しているせいなのか、その他の要因のせいなのか。どうでも良い。 吐息がかかる。綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。偶然なのか故意なのか、私の首に彼の手がかかった。 何故か、怖いという感情はなかった。不死であるということを考慮の外に置いても、そういう感情は一切抱かなかった。 そして、彼の口から紡ぎ出される言葉は、 聞きたくなかった、 聞きたかった、 禁断の、問答。 「貴様に願望は、ないのか」 その問いかけに、私は――――― 「―――――自由になりたい」 それは、私が生まれて初めて外に発露した『自我』だった。
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Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE 『天戯弥勒か、またうさんくせーのが出て来たな。おまけにうっとおしい立場まで与えてくれやがって』 暗闇の中で語られた聖杯戦争の概要。それは予想したものと大きく違う物ではない、そう思った。実際聖杯なんて物に縋るロクデナシども…ましてや親殺しなんて考えるおれのような奴が集う殺し合いなんて、殺伐としたものだと思っていたが…… 『アッシュフォード学園の生徒だぁ?ちんたら学生生活送れってのかよ』 おまけにこのテレホンカードを使えば途中棄権可能ときた。存外ヌルイじゃねえか。 『本当に殺し合わせる気あんのかね、あいつ』 『おそらく何か意味があるんだろうよ』 念話での独り言に律儀に答えるライダー。生前の彼はなんだかよくわからないもの…‘ひとつなぎの大秘宝’を求めた者たち、そしてそこに眠る意思を知っている。ロジャーの遺志、Dの意思。聖杯もおそらく同じ、天戯のやつは何か目的をもっている。 『聖杯に必要なのか、あいつの目的に必要なのかは分からねェがな』 『邪魔なルールが多すぎるぜ、こいつは』 学生生活など今更送るつもりはない…ないが、欠席している生徒というのはあまりにも露骨にマスターだとばれるのではないか?真っ向からのバトルロイヤルを考えていた身としては回りくどくて仕方ない。 それにこのテレカ。おやじを殺せる能力者なら協力を求めるつもりだったが……これでどこぞに帰られちゃ人材確保は難しいんじゃないか?いっそ公衆電話の類をぶっ壊すか? いや、それより聖杯をとることを考えるべきなんだろう…… 『いくぞ、ライダー。学園とやらの下見だ。お前の戦闘は目立つようだからな』 『ああ、それで出てたのか。月も綺麗だし散歩かと思ったぜ、グラララ。戦闘なら海に行きたいもんだがそうはいかねぇか』 戦地で、すでに開戦したというのに散歩などと言ってのける男は器が大きいのか呑気なのか。 強力なサーヴァントゆえの自負でもあろうが、大型船の召喚に地震とその分目立つ。敵に目をつけられないためにも戦地は選ぶべきだろう。 敵がどのくらいいるのか、学園に登校した場合不利にならないか、それを考えるためにも戦地の偵察に二人は動いた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ゆらゆらと、夜闇に溶ける黒衣の男……学生服の青年と、執事服の老人が夜の町で向かい合う。 「よい夜ですな、若僧(ボーイ)?」 語りかける執事(バトラー)。その目はすでに殺意でぎらついている。 「本当にいい夜。こんな夜ですもの、血もたぎるというもの。静かで…本当にいい夜」 継いで語る女吸血鬼(ドラキュリーナ)。学生服の男の傍らに感じる戦士のにおい……それを感じて霊体化を解き、彼女も闘争心をたぎらせる。 それを受けて伝説の海賊もまた姿を現す。 「コウモリのような翼、白い肌に赤い眼……お前、まさか吸血鬼か?」 「あら、よく分かったじゃない。そう、私はツェペシュの幼き末裔、永遠に紅い幼き月。此度はランサーのクラスとして現界したわ。あなたは…海の男ね?焼けた肌がとてもキレイ」 「あァ、それなりに名の通った海賊さ。おれはさっきまでマスターと吸血鬼について話してたんで分かったが、そっちはいい目してやがる」 穏やかに言葉を交わしながらも確かに戦意を酌み交わす。ただ在るだけで威厳に満ちた王のやり取りは多くの英霊が集うこの地でも希少なものだろう。 「吸血鬼の嬢ちゃん、聞きたいことがある」 「何かしら、人間?」 王の問答に割り込むはこの場で最も年若い青年。その目に宿す殺意の先は目前の敵か、遠き父か。 「吸血鬼の一部を取り込み不死身になっちまった奴を殺す方法、わかるかい?」 かつて尊属殺と言われた重罪を、罪人カインの子吸血鬼に問う。王の問答はとたん罪人同士の血なまぐさい会話に堕ちていく。場に満ちた殺意がそれをさらに醜く彩る。 「餓鬼が妙な質問するのね。日光や白木の杭じゃ死なない、のよねぇ。ただ吸血鬼に成ったわけじゃないなら、私少食だから眷属いなくてよく分からないわ。ドラキュラ殺しの執事なら何かわかるかしら?」 かわいらしい笑みを浮かべ、しかし残虐な文言を吐く。人がパンを食すように血を飲むのが吸血鬼(ミディアン)、吸血姫(ミディアン)、化物(ミディアン)。 彼女は執事にして主君である男に罪人の問いを渡すと 「ドラキュラ曰く、不死身の化物(フリークス)など存在しない。くたばるまで殺してやるのがただ一つの手段かと」 ただ、殺す。死神の回答は至ってシンプル。 「よく分かったよ。ありがたい助言(アドバイス)に礼を言うぜ、役立たず(ボンクラ)ども」 頭をつぶそーとも、粉みじんにしよーとも、削りとろーとも、死ななかったおやじがそれで死ぬなら苦労はない。 決別。その言葉を合図にするように4人は戦闘態勢に入る。 「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」 宣言と共に飛びかかる吸血鬼。狙いは敵マスター、虹村刑兆。 その速度は最速のクラス、ランサーに恥じぬものだが 「!」 目前に大きな薙刀が振るわれ、軌道を変える。薙刀を構えたライダーがこちらを睨むと どん!!! と音が響いたような気がした。 それは数十万人に一人のみが持つ天賦の才、覇王色の覇気…その強大な気迫。ライダーと圧倒的な実力差があるものは意識を保つことすら適わずその身を折るが 「ふん」 レミリア・スカーレットは意に介さない。彼女は屈する側ではなく膝をつかせる側だ。 己がマスターである虹村刑兆に効果を及ばさないくらいは老いた身でも難しくない。 残る一人は…… 「ウォルター・C・ドルネーズ。ヘルシング家、およびランサー(お嬢様)の執事(バトラー)。元国境騎士団(ヘルシング)ゴミ処理係。行くぞ」 高らかに名乗りを上げ、刑兆に戦いを挑む。本来なら老いた彼では覇気に完全には耐え切れず一瞬ふらつく位の影響はあっただろう。 だが、カリスマ……ヒトラーに従う兵隊のような気持ち!邪教の教祖にあこがれる信者のような気持ち! レミリアの持つそれは本来のものではないため団体戦闘において意味を持たず、人を引き付けるのみ。だが、その魅力は主君のため戦いに臨む執事の戦意の原動力となる。 ゆえに。あるじ(レミリア)と共にある限り、執事(ウォルター)は伝説の大海賊に対しても気圧されることはない。 それを確かめたライダーはマスターに視線を軽く送ると 「おれが相手してやろう。永い夜になりそうだな……!!」 ランサーの前に立ちふさがって、薙刀から震動を放ちつつ切りかかる。当然ランサーは回避し、二人ともマスターから距離をとって闘い始めた。 「バッド・カンパニー!」 マスターたちもまた戦闘を始める。飛ばしてきたワイヤーをグリーンベレーに防がせる刑兆。 「おもちゃの兵隊…?奇妙なものを…」 「見えて…いるのか?」 互いの呟きに疑問を覚えるも戦場は動く。 ワイヤーを飛ばし、切り刻もうとするウォルター。それに対して刑兆は後手に回るざるを得ない。 体にグリーンベレー含む多くの歩兵を纏わせて防ぎ、アパッチのローターでの防御も行う。時折戦車や兵隊からの銃撃を行うも容易く回避すされてしまった。 (小さな軍隊…なんだ?ワイヤーを防ぐ瞬発力はあるらしい。吸血鬼や魔術師が扱うという使い魔か…?こちらからの攻撃は効かないくせにあちらの攻撃は十分な威力がある、当たれば少々厄介だ) (ワイヤーを飛ばす速度自体は人間のそれだ。スタンド…ザ・ハンドなんかに比べれば遅い。 遅いが…技量が半端じゃないし、人としてはかなりの速さだ。銃撃のタイミングも読まれているし、こちらは回避で精いっぱいだ。そもそもなぜスタンドが見えている?) 衰えたウォルターの技量と力では仕留めきれない。経験と速度の足りない刑兆もまた決定打に欠く。若さがあれば、億泰がいれば、とお互いにないものを求めてしまう。 膠着した状況を動かすのはサーヴァントの闘いと考え、闘いつづけながらもそちらの様子をうかがう二人。 巨躯の老人と殴り合う幼き少女。それは字面だけ見ればいろんな意味で警察沙汰だろうが… 小柄と翼から生じる音にも迫る速度を生かし、近接戦で体格の勝るライダーと渡りあうランサー。槍は用いていないが、得物の大きさゆえに近接戦に不利が生じるライダー相手には好判断と言えるだろう。吸血鬼の怪力でもって殴る、殴る、殴る、殴る。 だが対するライダーも歴戦の英雄。周囲を飛び交うランサーの攻撃を得物で、肘で、柄で受け、受けきれないものは震動と武装色による硬化、そして彼女を上回るパワーでいなす。僅かのダメージを受けつつも時折震動を放ち牽制する。回避は容易いが、これをマスターに向けて撃たれてはたまらないと攻めを急ぐランサー。 速度で勝るランサー、力で勝るライダー。夜の女王と海の皇の闘いは、侵略する女王と守る皇の形ではあるがこちらも概ね互角。開戦時の言葉通り、【永い夜】になるかと思われたが 「バッド・カンパニー!」 戦局が双方互角ならば、有効的な援護を決めた方が勝つ。ライダーの懐から現れ援護射撃を行うスタンド……視線と交換でマスターから借りていた隠し兵器。 レミリア・スカーレットは優れた戦士である。幻想郷という閉ざされた世界とはいえ鬼や天狗、様々な妖怪と闘い、数百年単位で積み上げた経験は人間の英霊では届くものではない。 しかし彼女が振るうは個の武勇。家族、仲間、友人、部下、様々な関係の者と肩を並べはしたが軍隊(カンパニー)を率いる闘いならばこの聖杯戦争においてエドワード・ニューゲートに並ぶものはない―――! (避け―――――きれない!?) 必死に回避の姿勢をとろうとするが指揮が巧みか、銃手の腕かその軌道は見事に心臓に届く……かと思われたが (何とも…ない?) 確かに直撃した。だがダメージはない。 バッド・カンパニー……スタンドは精神エネルギーのビジョンであり、幽霊ひいてはサーヴァントへも干渉可能である。しかしBランクの対魔力を持つランサーにダメージを与えるほどの高位の神秘を宿すには至らなかった。 しかしその銃撃は無意味ではない。 (くそっ、体勢が、まずい!弾幕を避ける癖が仇になった!) 一度回避のために崩れた姿勢は戻らない。その隙をつき、震動を纏った拳を 「ウェアアアアア!!!」 打ち放った。 「うぐっ…う…」 「お嬢様!!」 直撃を受け、吹き飛ばされるランサー。本人の飛翔スキルによる減速とウォルターの助力を受け、どうにか静止、体勢を立て直す。 それを見た刑兆は放たれたウォルターの牽制をいなし、ライダーの下へ合流する。形勢はライダー主従に傾いた。 戦局が変わった以上今までと同じ戦術はとれない、機動力の落ちたランサーでは今度は五分にならない可能性が高い。 (弾幕での遠距離戦?いや、あちらは衝撃波を放てるし、マスターの方もあの大量のヒトガタで援護が出来る。 ウォルターが遠距離攻撃できない、加えて魔術師ではない以上、手数でこちらが不利。ウォルターをかばうのも厳しくなるうえ、奴はライダーのはず。対魔力で弾幕が効かなかったらこちらが詰み) (今のような不意打ちが何度も使えるわけがねェ。遠距離戦に持ちこんでもいいが、奴がそれに対応した武器があると厄介、また千日手になる。ランサーを名乗りながら武器を見せてねェのも気にかかる) ( (宝具を使うか…?) ) かたや逆転のため、かたや決定打のため、切り札の開帳を考える。 運命を操る必中の槍を。長き旅を共にした乗機を。己が居城の再現を。己が家族の助力を。 こんな緒戦から…? 『退くわよウォルター、序盤から消耗は避けたい。いったん撤退して傷を癒す』 『認識しました、レミリアお嬢様(ヤー、マイマスター)』 飛翔スキルでもってウォルターを抱え、あさっての方向へ飛び立つランサー。騎兵の本懐を見せていないのは気になるが…海賊というなら陸上で有効な乗機が出るとは考えにくい。 それを見て震動波による追撃を考えるライダーだが 「よせ、あの市街地吹っ飛ばす気か?消耗してんのにこれ以上目だって敵を引き寄せると厄介だ。おれ達も引くぞ」 それを聞き、矛を収めるライダー。確かに、生前は無制限に放つことが出来た震動もサーヴァントの身では魔力を消費する。そこに慣れていなかった。 威力の割に燃費はいい部類だが、その威力もだいぶ落ちている。随分使い勝手が悪くなったものだ。 「グララララ…悪ィな、調子に乗っちまった。で、どうするよ?偵察なんて空気じゃなくなっちまったぜ」 「とにかく離れるぞ。騒ぎを聞きつけられて連戦なんざごめんだ。いったん帰って、色々考えることがありそうだ」 「学校とやらはどうすんだ?」 「なるようになる。行くぞ」 学生の身分なんて邪魔でしかないが、拠点が準備されているのは悪くねェ。 だが、思ったより疲れた。スタンドとサーヴァントの同時行使は慣れないとキツイな。 【C-3/街外れ/1日目 未明】 【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]疲労(小)、魔力消費(小) [令呪]残り3画 [装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……? 0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな… 1.帰宅し、まず休養とそれから考察。 2.登校するかどうかは気分次第。 3.公衆電話は破壊する…? [備考] バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。 明朝登校するかどうかは後続の方にお任せします。 【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】 [状態]疲労(小)、魔力消費(小) [装備]大薙刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける 1.刑兆と共に帰宅、考察。 2.できれば海に行きたい [備考] NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。 [共通備考] ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。 B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。 [地域備考] C-3市街地の外れで戦闘を行いました。バッド・カンパニーの銃声が響き渡り、グラグラの実の震動が伝わりました。ただし銃声はスタンドのものであるためNPCには聞こえなかった可能性が高いです。 『あなたの言う通りだったわね、ウォルター。日傘片手に勝てる楽な闘争じゃあない』 『ええ、ですがこのくらいなら苦境の内にも入りません。我らならば勝てる戦です』 街外れを飛び、戦地を離れる主従。執事の諫言をうけ、昼の外出を避けたのは妙手だったと思い返す。 反省はしているようだが、戦意が萎えることはない。 そう、戦意は失わない。だが…… (あの年老いたサーヴァント…アーカードなどのような人外ではなく、人間のようだった。それがレミリアお嬢様…吸血鬼と互角にわたり合っていた……老いた身で) なぜ老年なのだ?サーヴァントとは全盛期で召喚されるものではないのか?何か理由が? 胸中を占める疑念と……僅かな嫉妬。詮無いことと分かっていながら先の戦闘で己の衰えを自覚した分、負の思いを感じざるを得なかった。 『さすがに疲れたわ。ダメージも小さくないしどこかで血がほしいわね』 『ふむ…』 余計な思いはいったん横に置く。 戦闘を終え、気が抜けたか外見相応の面が出たようだ。聖杯戦争の参加者以外の一般市民もいるようだしそれを頂くか…?しかし先の主従に吸血鬼とばれてしまっている以上目立つマネは避けた方がいいだろうか。病院から輸血用血液を確保することを考えるか…? 『早く行きましょ。ちなみに私はB型が好みよ』 【C-3/市街地上空/1日目 未明】 【ウォルター・C・ドルネーズ@出典】 [状態]健康、魔力消費(微小) [令呪]残り3画 [装備]鋼線(ワイヤー) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする 1.レミリアの食事(血)の確保と休養。 2.打って出るのは夜間のみ。 3.ライダー(エドワード・ニューゲート)に対して僅かな嫉妬と疑念。 【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】 [状態]ダメージ(中、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)、魔力消費(小、現在進行形でダメージの回復に消耗中)、若干の空腹 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く 1.食事と休養。ウォルター、はやくー 2.もう日傘片手で勝てるとは考えない。全力で行く。 [共通備考] 虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。 現在C-3の上空ですが、どこに向かって飛んでいるのか、レミリアの食事のためNPCを襲うか、病院やそれに準ずる施設に向かうか、そもそも施設の有無を知っているのかなどは後続の方にお任せします。 BACK NEXT 016 LIKE A HARD RAIN 投下順 018 ゴムと反射と悪党と 015 悪魔の証明 時系列順 018 ゴムと反射と悪党と BACK 登場キャラ NEXT 006 ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット) 028 あの空の向こう側へ 009 虹村形兆&ライダー 虹村形兆&ライダー(エドワード・ニューゲート) 027 MY TIME TO SHINE